龍の薬膳 part51 暑気払い
2026.07.09
夏至を迎え、いよいよ本格的な夏の到来です。夏の暑さを乗り切るための伝統的な養生や習慣に「暑気払い」というものがあります。昔の人々の医学的な知恵として取り入れられたもので「暑気」とは、夏の暑さが体調不良の原因となる「暑邪」のことをいい、これを払うことを目的としたのが「暑気払い」です。
時代をさかのぼると平安時代に冬の山間の氷室に蓄えていた氷を夏に削り、食べたり、冷やした甘酒を飲んで暑さをしのぐ宮中行事として行われたのが起源となります。清少納言の「枕草子」の中にも貴族たちが削った氷に甘い汁をかけて食べる様子が描かれています。
江戸時代には、発酵食品の栄養面が注目され、冷やした甘酒が庶民の間に普及し、夏バテを防ぐための「酒」や「薬」を楽しむ文化として広がりました。
年々、夏の暑さも厳しくなってきていますが、暑気払いの薬膳として、スタミナをつけるには、うなぎ、豚肉料理、焼肉、香味野菜(にんにく、にらなど)があります。身体の熱をとるには、そうめん、冷やしうどん、夏野菜(トマト、きゅうり、なす、 とうがん、おくらなど)があります。汗のかきすぎによる水分の消耗には酸味のあるもの(梅干し、酢の物)があります。
和菓子の中にも暑気払いを意味する伝統的なものがあります。もともと、和菓子はおやつとしてだけではなく、無病息災や厄除けとして季節の変わり目に歳時菓子として親しまれてきました。
①水無月(みなづき)は、京都の伝統和菓子で氷に似せた三角形の外郎の上に小豆(魔除けを意味する)がのせられています。
②水ようかんや葛餅は、つるりとした喉越しで、夏バテ気味の食欲のない時にもさっぱりと味わえます。
③土用餅は、夏の土用の入りに食べるあんころ餅でお餅の力と小豆の赤色が厄払いをあらわしています。
先人たちから受け継いだ暑い夏の乗り越え方の伝統に思いを馳せながら涼を感じてみてはいかがでしょうか。
