しん漢方心療クリニック

お悩みの症状

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心の病気や、心の病気からくる体の症状など、様々な治療に対応いたします。
気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。

不眠症

誰でも眠れないことはあり、それが長期間続くと日中に様々な不調が出てくることを経験された方も多いと思います。だるさや、集中力、意欲の低下、頭痛、めまい、抑うつ気分などです。このように、長期間の夜間不眠があり、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下したとき、不眠症と診断されます。

画像:不眠症

不眠症の原因

不眠症の原因は様々で、多くの場合は当院で対応できますが、専門施設での検査が必要な場合もあります(睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害、身体疾患によるものなど)。

診察により不眠症の原因やタイプを選別します。不眠の原因として頻度の高いものは、ストレス、うつ病などの精神疾患、薬物や刺激物によるもの、遅くまでスマホやゲームをするなどの生活リズムの乱れ、寝室周囲の騒音や明るさ、温度、湿度などの環境要因、身体疾患(高血圧、咳、腎臓病、頻尿、糖尿病、関節リウマチ、アレルギー、脳梗塞など)があります。
不眠のタイプとしては入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などがあります。

治療目標

治療目標は、上記のような不眠の原因やタイプに合わせた薬剤選択、生活習慣の是正を行うことです。当院の特徴である漢方治療(+鍼灸治療)によって不眠体質の改善が期待できます。

睡眠薬は依存が怖いといわれる方も多いようですが、最近の睡眠薬は依存、副作用も少なく、自然に近い眠りが得られます。適切に睡眠薬を選択すれば安心して使用できますが、長期間漫然と使用することは避けます。

細かく生活習慣を聴取し、良い眠りをもたらす生活リズムや習慣をご指導します。自己流の安眠法をつくることもサポートします。

うつ病

うつ病は様々な原因からなり、一言で説明することは難しい病気ですが、脳のエネルギーが低下した状態になり、それによって精神症状のみならず様々な身体症状が現れます。

脳のエネルギーが乏しくなっているため、自然治癒力が発揮できず、時間の経過で症状が悪化したり、長引いたりして、放っておくと生活に大きな支障をきたすようになります。

画像:うつ病

主な症状

うつ病の中核症状としては、「楽しみや喜びを感じない」、「気分が腫れない」、「好きだったことが楽しめない」等があり、「自分には価値がない」、「イライラする、落ち着かない」、「生きていても仕方がない」、「頭が働かない」といった症状も多くみられます。また睡眠障害や、食欲不振も頻発し、悪心、嘔吐、眩暈、腰痛、頭痛、動悸、呼吸苦、性欲減退等の身体症状もみられます。

治療目標

治療の目標は以下の二つです。

  1. うつ病の症状を軽減して、以前のような生活を送れるようにすること
  2. 再燃や再発を防止すること

うつ病の治療には、「休養と環境調節」、「精神療法と疾病教育」、「薬物療法」の治療の3本柱があります。これらが適切に運用されるには、最初はとてもきついことだと思いますが、患者さん自信が現状を改善しようという意思を持つことが大切です。治癒していく過程で、良くなったり、悪くなったりという経過があり、多少後退することがあっても階段を一歩一歩上がるように改善を実感できると思います。

軽症の場合は漢方治療や鍼灸治療が単独で適応になり、効果が期待できます。患者さんの体質を、陰陽、表裏、寒熱、虚実などの証に見立て、補中益気湯、半夏厚朴湯、加味帰脾湯などから適切な処方を選択します。鍼灸的にはうつ病は肝虚のことが多くそれらを治療目標にします。目の疲れや肩こり等、身体反応の偏りが生じている部分を直接・間接的に修正していきます。

双極性障害

以前は躁(そう)うつ病と呼ばれていました。うつ状態と躁状態が交互に繰り返され、苦痛を感じたり生活に支障をきたす病気です。

うつ病から発症した際には、うつ病との鑑別が困難であることや、軽い躁の状態の時は症状が見逃されやすいことから、適切な診断や治療に至るまでに時間を要することが少なくありません。

うつ病と双極性障害は治療法が大きく異なるため、可能な限り早期の適切な診断が重要になります。そのためには家族や同僚から、数年前~普段の患者さんの様子を聞かせてもらうなど、周囲の人達から情報提供が重要になります。

治療目標

治療目標は、急性躁またはうつの治療、維持療法、再発防止です。薬物療法は確立されており、服薬出来ている限りは症状は抑えられ、再発も防止できますが、患者さんは「自分は病気である」という自覚が乏しいことが多く、自ら治療を求めてクリニックに来られることは稀です。

また、気分が変調しやすいゆえに、周囲にいる配偶者や同僚達を振り回し、次第に疎まれ拒絶されることも多く、治療者としては、患者さんに諦めることなく治療を続けてもらえるよう、忍耐強く接することが求められています。

適応障害

特定の出来事や状況がストレスになり、とてもつらくて耐えられず限界を超えたとき、精神や身体に失調が現れるものです。その人が感じるストレスは、別の人にとっては全くストレスでないことがあり、ストレスに対する反応や耐性は人それぞれで個性があります。

主な症状

症状としては、例えば何をしても楽しくない、むなしい気持ちになるなどのうつ状態なったり、不安感やイライラ感が強くなり、物事を悪い方にばかり考える、神経が過敏になりソワソワする、緊張や焦燥が続く、人にやたらと腹が立つなどがあります。また行動面では遅刻や無断欠勤、不登校、暴飲暴食、多量飲酒、無謀な運転、暴力行為などを起こすこともあります。

治療目標

治療目標は、ストレスを見つめなおして、それが生じている状況を整理し解決法をともに考えたり、ストレスに対する適応力を高めたり、ストレスを回避できるような環境調節を行うなど、ケースバイケースでその患者さんに合わせた治療を行っていきます。

うつ病とは異なり、薬があまり効かないことが多いです。
患者さんの抵抗力を高めるため、漢方や鍼灸を併用します。

不安障害

不安は「対象がはっきりしない、漠然とした恐れ、緊張感などの不快な感情で、動悸や呼吸苦、発汗などの自律神経症状伴うもの」です。対象がはっきりしているものや、軽い不安感は必ずしも病気とは言えず、誰もが感じているものです。私たちは普段、不安に適応して生活していますが、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、そのために日常生活に支障をきたしてしまう場合があり、それを不安障害と呼びます。

不安障害にはいくつか種類があります。

全般性不安障害

「特定の状況に限定されない、理由の定まらない不安や心配」が毎日長時間続き、改善されないと、徐々に動悸や胃痛などの身体症状や、不眠、抑うつ気分などの精神症状が現れるなどの悪循環が始まります。

本人にはこれをコントロールできず、自分や周囲に恐ろしいことが起きてしまうのではないかなどと一日中考え、落ち着かず、疲弊し、日常生活に支障をきたします。

治療目標

治療目標は、まずはお薬(漢方薬、向精神薬など)の力を借りて不安や身体症状を軽くし、その後、心理的問題を対処することです。家族や周辺にも協力も求めつつ、精神療法では不安症状の原因や、状況などを個別に取り上げます。そして不安を感じている際の認知の偏りがあるのならそれを認識し、考え方をコントロールし、自分の行動を適切な方向に変化させます。

社交不安障害(社会不安障害)

「恥ずかしがり」など性格の問題と混同されることもありますが、社交不安障害は人が集まり注目される状況で、強い不安や恐怖を感じ、緊張して、何か失敗して恥をかくのではないかという強い不安を感じる病気です。

極度の不安、恐怖、緊張とともに赤面、発汗、動悸、呼吸苦などの身体症状があらわれ、「失敗したらどうしよう」という思いに支配されて、なるべく人に会うのを避ける生活様式をとるようになります。

原因

原因は定かではありませんが、近年の研究では、セロトニンードパミン神経系の機能障害を指摘されています。10代初期以降に発症することもあり、治療せず放置すると、適切な友人関係をつくれない、進学や就職、結婚などの重要なライフイベントに制約がかかり、本人や家族に大きな負担となります。社交不安障害は、性格や能力の欠陥によるものではありません。社交不安障害という病気にかかっていると知り、早期に治療を始めましょう。

治療目標

治療の目標は、社交や対人不安を増強させる心理的問題を取り上げ、対応します。
患者さんは「自分は人より劣っており、周囲は私を馬鹿にしたがっている」などという意識や思い込みを長年持っており、本人の気質の一部になっているので、これを修正するのは簡単ではありません。認知の偏りを一歩一歩修正して、現実に向かう訓練をしていきます。

薬物治療としては漢方薬が有効です。ほかに抗うつ薬、抗不安薬を併用することもあり、心や身体の症状をとりながら、心理的問題に向かっていきましょう。

パニック障害

これも不安障害の一種です。理由なく、動悸、呼吸苦、発汗、めまい、吐き気といた発作を起こし、日常生活に大きな支障が出ている状態をパニック障害と言います。

この発作はとても強烈で、精神面では「死んでしまうのではないか」「逃げ場がない」「また発作が起こるのではないか」という恐怖が慢性的に続き、無治療のまま放置しておくと、うつ状態、引きこもりなど、患者さんの人生にとって大きな支障をきたします。

内科等を受診しても原因がわからないことも特徴です。患者さんは症状を周囲に受け止めてもらえず、一人で苦しんでいる状況も多く見られます。パニック障害の原因は気持ちの持ち方ではなく、脳内の不安に関する神経系の機能異常によるものであることが知られています。

治療目標

治療の目標ですが、まずは、パニック障害の症状の前面にある種々の身体症状(パニック発作)を薬物で軽快させます。軽症の場合は漢方薬で改善します。不眠やうつ状態等の精神症状の併存があれば、お薬で対応します。発作がコントロールできれば、「また何か起こるのではないか」という予期不安や、「逃げ場がない」などの広場恐怖に対処します。

症状の改善状況を見ながら、無理をせず暴露療法や認知行動療法も併用し、苦手だった外出が出来るようにするなど段階的ににサポートします。

強迫性障害

自分でもつまらないこととだとわかっていても、それが頭から離れず、何度も同じ確認を繰り返し、日常生活に大きな影響がでる病気です。

玄関の鍵をかけ忘れてないかな、ガスの火を消し忘れてないかな、などと普通の人でも外出後に気になることはありますが、それが度を越してひどくなり、確認行為が行き過ぎて生活に支障がでるとこの病名がつきます。
何かに触ると「手にウイルスがついた」というイメージで頭が占められ、不安に駆られ何度も何時間でも手洗いを繰り返し、皮膚がボロボロになるといった強迫行為が見られることもあります。

不潔恐怖、加害恐怖(誰かを傷つけることになってないか)、確認強迫、儀式強迫(決まった手順を踏まないと何か恐ろしいことが起きるのではないか)、数字への拘り、物の配置の拘りなども、よく見られる強迫観念、強迫行為です。

治療目標

治療の目標は、患者さんが強迫観念による不安に立ち向かい、やらずにはいられなかった強迫行為をしないで我慢することを身に着けることです。

汚いものを触っても、軽く拭く程度で手を洗わず我慢する、鍵をかけたか心配になっても家に戻らず我慢するなどの、暴露反応妨害法という手法を繰り返し続けていくと強い不安が弱くなっていき、強迫行為をしなくともよくなることが期待でき、再発予防効果もあります。薬物治療を併用することで、不安や恐怖等の症状を軽減することができ、認知行動療法の効果を補助します。

ためこみ症

ためこみ症は、実際の価値とは無関係に、ものを捨てること、手放すことが持続的に困難であることによって特徴づけられます。これによって、生活空間がもので溢れかえって散在し、その空間の使用が大幅に制限されるまで所有物で占有されます。実際に価値があるかにかかわらず、「ものを所有していたい」という欲求と、それを捨てることに対する苦痛から、ものをためこんでしまう行為が、青年期に発症し、30代には臨床的な障害を引き起こし、慢性的に持続、または増悪していきます。
患者さんはものに愛着を感じているのに拘わらず、ものは整理整頓できません。家族がものを処分しようとすると、ものの美的な面や有用性を主張し、強い情緒的な愛着からも抵抗します。所有物は様々で、雑誌や本、新聞、オーディオ、古着、ペットなどあらゆるものが対象となります。

画像:ためこみ症

治療目標

治療の目標は、これらの間違った考え方を振り返り、自らの考えのズレを自覚し、日常生活の中で、ためこみをしなくてもよい気持ちに気づくなどの認知行動療法が有効です。慢性持続性の経過であり、生活面で多くの障害が生じています。個別にじっくり問題に取り組んでいく必要があります。抗うつ薬等の薬物併用も有用です。

アルコール依存症

お酒を長期間飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態をいい、自分の意思ではお酒の飲み方をコントロールできなくなります。本人の意思の弱さやだらしなさが原因ではなく、誰でもこの病気になる可能性があります。
アルコールの特徴として、飲んでいるうちに耐性が形成され、飲酒量が増加しても酔いにくい状態になり、飲酒を続けているとさらに飲酒がコントロール出来ないような精神状態(精神依存)になり、さらにお酒を飲まないと手が震える、汗をかくなどの離脱症状(身体依存)が出現するようになります。
朝からお酒を飲み仕事ができなくなる、お酒をやめるように言う家族に暴力をふるうなどで人間関係、社会的地位を失う人もいます。うつ状態、不眠、肝機能障害、低栄養等を合併する人も多いです。

画像:アルコール依存症

治療目標

治療の目標は、本人と飲酒がもたらす諸問題や症状をよく話し、これらを自分の問題の認識してもらい、断酒の決断へと導きます。

必要に応じて抗酒薬を処方し、本人の意思をサポートします。合併する精神症状や身体症状にも対応します。肝機能障害等には他科との連携も行います。断酒の維持のために自助グループ(断酒会、アルコホーリクス・アノニマス)への参加もお勧めします。

本人だけでなく家族も、自助グループで同じ立場の人たちと交流し、この病気に苦しむ患者さんを孤立させず、生活面からもサポートして行くことが重要です。外来での治療で効果がなければ、早期に入院治療に移行することも重要です。アルコールが容易に手に入る環境での治療は失敗することも多く、本邦でのアルコール依存症の治療の中心は入院治療です。

統合失調症

統合失調症は、遺伝的要因や環境要因などにより、脳の働きや機能に微妙な異常が起こることが原因と言われています。

主な症状

症状は様々で、

  • 陽性症状
    幻覚(幻聴、幻視など)、妄想(被害妄想など)、作為体験、独語、空笑など
  • 陰性症状
    自閉、引きこもり、疎通性の低下など

これらに滅裂思考、錯乱、常同行動、感情鈍麻、集中力や記憶力の低下などが加わることがあります。

これら症状に伴って、日常生活において様々な支障をきたします。家族や他人と社会生活を贈る機能が損なわれたり、自分が病気であるという認識が持てずに治療を受けずに放置するなどの特徴があります。早期発見や早期治療、再発予防のための治療の継続が大切です。

治療目標

治療目標は、患者さんに統合失調症という病気を理解してもらい、治療に参加できる環境を整え、維持することです。抗精神病薬の導入、トレーニングプログラム、地域支援、精神療法、家族への心理教育などを行っていきます。

新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者さんのほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになっています。

妄想性障害

妄想とは事実でないことを事実だと確信して、それを訂正出来ないことです。妄想性障害はこの妄想が長期間持続し、対人関係で大きな支障が生じる病気です。妄想が及ばない生活領域では本人の機能障害は目立たず、普通に生活が出来るため、周囲に病気だと気づかれないことも多いです。患者さんは周囲から妄想を訂正するように言われるため、イライラし、不機嫌になり、暴力をふるったり、訴訟行為を繰り返したり、孤立してうつ状態になったりする場合もあります。

妄想性障害の分類

妄想性障害は、精神障害に関する国際的な診断基準の1つであるDSM-5では、妄想の内容によって以下のように分類されています。

  • 被愛型
    ある人物が自分に対して恋愛感情を持っているという妄想で、悪化すればストーカー行為を行う場合もある。
    例)あるアイドルが私のことを愛しているのだと確信
  • 誇大型
    実際には認められない卓越した才能を持っている、重大な発見をしたなどと確信する、著名人と特別な関係にあるという妄想
    例)自分は天皇の子であるという妄想、大物ぶった誇大的な態度をとる
  • 嫉妬型
    配偶者や恋人が浮気とか不倫をしていると確信する妄想
    例)たまに外出する夫(妻)に対して、不倫していると確信
  • 被害型
    証拠がないのに、騙されている、嫌がらせを受けている、毒を盛られているなど、不当に被害を受けているという妄想
    例)隣人としばしば目が合うと、観察され狙われていると確信
  • 身体型
    自分の身体の機能や感覚にかかわる妄想
    例)自分が寄生虫に感染している、自分は悪臭を放っている、自分はとても醜いと確信

治療目標

治療の目標は、患者さんは自分は病気であるとは思っていないことがほとんどであるため、ゆっくりと医師との信頼関係を築くことを行い、妄想に患者がのめりこまないように導くことです。統合失調症と違い、中核症状に対してはお薬が効きにくいことが特徴です。

ADHD

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、約5%もの子供が診断基準に当てはまるといわれていますが、子供だけにみられる障害ではありません。軽症の場合は大人になると症状が目立たなくなる例もありますが、2~10%の大人が診断基準にあてはまるといわれます。

以下の9つの症状(不注意と多動・衝動性でそれぞれ)が6項目以上みられて、それが6か月以上継続し、家庭や学校などの2つ以上の環境で、生活が学業に悪影響をきたしているときはADHDの可能性があります。

不注意

  • 学業や仕事中に不注意な間違いが多い
  • 課題や遊びの活動中に、注意を持続することが出来ない
  • 直接話しかけると聞いていないように見える
  • 指示に従えず、業務をやり遂げることが出来ない
  • 課題や活動を順序立てることがむずかしい
  • 精神的努力の持続を要する課題を避ける、いやいや行う
  • なくし物が多い
  • 他の刺激によって気が散りやすい
  • 日々の活動の中で忘れっぽい

多動・衝動性

  • 手足をそわそわ動かしたり、いすの上でもじもじする
  • 授業中に席を離れる
  • 不適切な状況で走り回ったり高いところに登ったりする
  • 静かに遊べない
  • まるでエンジンで動かされているように行動する
  • しゃべりすぎる
  • 質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう
  • 順番を待てない
  • 他人の邪魔をする

原因

ADHDの原因ははっきりしていませんが、遺伝や環境要因などが関与していると考えられ、近年脳内の神経伝達物質の調節障害があることが示されています。

治療目標

治療の目標は、本人と家族にADHDという病気を理解してもらい、治療に参加できる環境を整え、維持することです。

上記のような行動に対して患者さんは常に周囲から注意を受け、イライラしたり、自尊心が低下していたり、うつ状態になったり、家族や周囲との信頼関係が損なわれていたりすることが多いです。家族や周囲には、ADHDは脳の機能の偏りが背景にある病気であり、本人の努力で行動をコントロールできないことを理解してもらいます。
ともに対策を考え、患者さんがポジティブになれるような言葉をかけをしていく工夫をしていきましょう。

脳内伝達物質の調整作用がある3種類の抗ADHD薬が認可されています。症状の特徴やライフスタイルに合わせた薬物の選択を行います。イライラや抑うつ気分がある場合は、漢方薬やその他の向精神薬も併用します。

ギャンブル、インターネット、ゲーム依存症

賭け事やゲームがやめられないメカニズムは、薬物依存やアルコール依存と似ていることがわかり、依存症に分類されることになりました。
パチンコ店やオンラインゲームの刺激的な音楽や映像により、賭け事に負けていても、錯覚により負けてないような気がしたり、脳が興奮したりする作用があります。これは賭け事やゲームにより脳内報酬系が活性化してドーパミンという報酬物質が多く放出され、賭け事やゲームをもっと続けたくなるようになるためです。

主な症状

賭け事やゲームにのめりこみ、賭け事をしないと落ち着かず、やめようと思ってもやめられず、賭け事のことになると平気で嘘をつき、借金をしたり、家族のお金を奪ったりといった症状が見られます。

ギャンブル依存症の特徴

負けていても最後には勝つと確信していたり、負けたことはすぐに忘れ、勝ったことは明瞭に覚えていたり、運や迷信を信じたりするなどです。

ゲーム依存症の特徴

ゲームをやらないと禁断症状が生じ、「ゲームしたいのにできない」ことに苛立ち衝動的な行動をとる場合もあります。

治療目標

治療の目標は、これらの間違った考え方を振り返り、自らの考えのズレを自覚し、日常生活の中で、優先順位を受けて生活のリズムをつけたり、賭け事やゲームをしなくてもよい気持ちに気付くなどで、認知行動療法的な方法が有効です。脳が不適切に興奮することで生じる不眠やイライラにはお薬により対応します。

またギャンブル依存症の自助グループ(ギャンブラーズ・アノニマス:GA)が久留米他、全国にあり、これらの会合に参加することもお勧めできます。ゲーム依存症の自助グループ(オンラインゲーマーズアノニマスふくおか、など)もあります。

不登校

不登校の原因や背景は人によって異なりますがある程度の定型はあります。

  • 発達障害や不安障害などの精神疾患に起因するタイプ
  • いじめ等の環境に起因するタイプ
  • 甘えや母子分離不安など自我形成不全タイプ
  • 人に合わせ過ぎたり優等生ぶって疲労してしまった過剰適応タイプ など

また、朝起床できない体質の人が徐々に不登校になる報告は多く、背後には起立性低血圧や貧血等の体質が関与していることが多くあります。それぞれのタイプに応じた接し方を考えていきましょう。
朝が苦手な人には漢方治療が奏功することもあります。

起立性調節障害

以下のような症状や状況が、学童期から続いている場合は、起立性調節障害の可能性があります。

  • 朝起きられない
  • 目が覚めても気分不良や頭痛・腹痛がして布団からでられない
  • 学校や仕事にいけない
  • 病院で検査を受けても異常はないと言われる

起立性調節障害は、自律神経の調節障害によって起こります。自律神経系には交感神経系と副交感神経系があり、朝になると交感神経活動が優位になって身体が活性化し、夜になると副交感神経活動が優位となり身体を休息させるという周期的活動がありますが、起立性調節障害の患者さんは、朝になっても交感神経活動が高まらず、昼頃まで心身の不調が続くため午前中は何もできない状態になることが多いです。午後からは次第に体が動くようになるのですが、夜になっても交感神経活動が下らず、なかなか寝付けないというのも特徴です。全身の血流は自律神経系が適切に働いたとき、起立時には重力の影響で下半身に溜まりがちな血液を上半身に戻そうとする作用がありますが、起立性調節障害の患者さんではこの機能がうまく働かず、上半身、特に脳の血流が低下しています。これにより様々な症状が現れると説明できます。これらの状況が学童~思春期から見られる場合、起立性調節障害を疑います。大人になっても症状が続いている場合もあります。この障害の有病率は比較的高いことが知られており、小中学生の10人に1人ほど、不登校の原因の30%ほどに併存していることが近年報告されています。

自律神経系調節障害に加え、学校や家庭でのストレス、水分の接種不足、運動不足などが発症の要因となり得ます。

起立性調節障害における自律神経機能障害の有無は、安静臥床時の血圧と脈拍を測定し、起立してからの血圧低下からの回復時間、その後の血圧と脈拍を測定するという新起立試験を行って診断します。

治療目標

治療の目標は、ストレスや生活習慣などの心理社会的要因を見極め、適切介入することが中心になります。患者さんは学校や仕事を休みがちになるため、家族に「怠け」と思われている場合が多く、親子関係や夫婦関係が悪くなっています。「気合」や「頑張り」では治らない病気であることを理解し、家族も治療環境整備に協力していただくことが重要です。運動習慣を身に着ける補助や、適切な食事や飲水行動を促すことなどです。薬物療法にはミドドリン塩酸塩、漢方薬などがありますが、適切に診断を行ったうえで慎重に選択します。薬物療法のみでは効果が少ない印象です。

認知症

物忘れを症状とする疾患は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症が代表ですが、その他、老年期うつ病や慢性硬膜下血腫、水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症など様々な疾患が原因になることがあります。

年齢相応の物忘れであることも多くあり、診断の精度が求められます。当院医師は認知症患者さんの診断と治療に長年携わり、早期診断と治療、生活環境の整備等に豊富な経験があります。

画像:認知症

受診を躊躇されている方、認知症の身内への向き合い方がわからないご家族の方などに、プライバシーに留意して適切なご助言を行います。年齢を重ねるごとに心身の不調が増えている方の背後に、認知症の発症が隠れていることもあります。加齢に伴う症状全般について、どうぞ遠慮なくご相談ください。

自閉スペクトラム症

最近までは、自閉症の特性をもつ障害は典型的な自閉症に加え、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などに分けられていました。

典型的な自閉症は、言葉の発達が遅れ、相互的なコミュニケーションをとるのが難しいのに対して、「アスペルガー症候群」では言葉の遅れがなく、比較的コミュニケーションが取りやすいという特徴があります。これらの障害には、対人関係の難しさやこだわりの強さなど、共通した特性があります。

そのため、別々の障害として考えるのではなく、一つの集合体として捉えたのが、自閉症スペクトラム障害という考え方です。

広汎性発達障害は、最新の診断基準であるDSM-Ⅴでは自閉症スペクトラム障害に名前が変更されたのですが、「広汎性」というとすべての領域の障害というネガティブなイメージがありました。
自閉症という特定領域に限定された能力障害という、現状に即した名称に改正されたと思われます。

主な症状

DSM-Ⅳでは基本症状は、

  1. 対人的相互反応における質的障害
  2. コミュニケーションの質的障害
  3. 行動・興味・活動の限定された反復的で常同的な様式

の3領域に分けられていました。

DSM-Ⅴでは基本症状は、

  1. 社会的コミュニケーションと対人相互交渉の障害が様々な文脈において持続的に認められること
  2. 行動・興味・活動の限定された反復的な様式

と2つにまとめられました。

また、「感覚刺激への過剰刺激・低反応、あるいは感覚への異常な興味」が症状項目に明示されたことや、現在の症状だけでなく過去の症状でも評価してよいと明記されました。

治療方針

治療方針ですが、自閉スペクトラム症の人たちは、特性を周囲に理解してもらいにくく、いじめ被害に遭う、一生懸命努力しても失敗を繰り返す、などのストレスがつのりやすいため、

  • 身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)
  • 精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)
  • 不登校やひきこもり
  • 暴言・暴力
  • 自傷行為

などの「二次的な問題(二次障害)」を引き起こしやすいといわれています。

そうなる前に家族や周囲がその子の特性を正しく理解し、本人の「生きづらさ」を軽減させて二次的な問題を最小限にとどめることが、自閉スペクトラム症への対応の基本となります。

漢方薬や向精神薬を使用して本人の様々な症状を軽減します。

恐怖症

恐怖症は最新の診断統計マニュアルDSM-5では、限局性恐怖症という名称で呼ばれます。

患者さんは、特定の状況または対象に対して直ちに不安や恐怖を感じ、特定の状況・対象を積極的に回避しようとします。その恐怖や不安は実際の状況や対象の危険性とは釣り合わないことが多いのですが、その不安・恐怖は6か月以上続き、患者さんに著しい苦痛を引き起こしているか、社会的・職業的機能が著しく損なわれているときに、この病名がつきます。

特定の状況・対象は、蜘蛛やムカデ、蛇、トンネル、高所、閉所、飛行機、血液、嵐、雷などがあます。

治療目標

治療目標は、まずは病気を本人と周囲が理解することです。それほど怖がらなくてもよいのに、と家族や友人は考えますが、患者さんとっては死に直面したような恐怖体験をしている可能性があることを周囲に理解してもらい、本人からは悩んでいる気持ちを聞き、解決に向けた環境整備を考えていきます。治療には抗不安薬や漢方薬等の薬物治療も併用しますが、心理・行動療法である暴露療法が基本になります。避けることが習慣になってしまっている恐怖の対象に対して、恐怖の程度が低いものから高いものへ徐々に直面し慣れていく方法です。例えば閉所恐怖症ではガラスのある部屋で一人になってみたりすることから始めて、段階的に狭い空間などの恐怖に直面して克服していきます。

心身症

心身症とは、基本的には身体の病気ですが、その症状は表面的にはストレスとは関係なく思えるため、一般内科や耳鼻科等をまず受診することが多いものです。しかし発症や経過に心理的要因つまりストレスが大きく影響する疾患群です。具体的には心身症には、高血圧症や気管支喘息、胃潰瘍や過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛など)、メニエール病、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、狭心症、糖尿病、神経因性膀胱、線維筋痛症、顎関節症、慢性疲労症候群などが含まれます。心身症は、日常生活で仕事や対人関係などの心理社会的ストレスに無頓着や無自覚な場合に発症・悪化することが多く、一般的治療では改善困難です。身体症状とストレスの間にある“心身相関”の理解を重視しなければ的外れな治療になることが多く、一般内科や耳鼻科などでは難治で、複数の病院やクリニックをドクターショッピングするも特徴とされます。

治療目標

治療の目標は、人それぞれの心理社会的ストレスに着目して心身相関の気づきを深めていくことです。また心身症は生活習慣病といわれる病気とかなり重なっており、ストレスによる過食や飲酒、喫煙、休息の少なさ、運動習慣がないなどの生活様式があることも特徴です。生活習慣の見直しを行うことで回復を早めることができます。個々の症状にはそれぞれに薬物療法も行っていきます。高血圧には降圧薬、気管支喘息には気管支拡張薬や免疫調整薬、過敏性腸症候群には腸管運動調整薬などを使用します。抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬も併用することがあります。難治例には、偏った認知パターンのためストレス耐性が弱まり、さらに症状が悪化している人がいます。身体反応の悪い癖を持続させる要因を変えていくために、認知行動療法が有効です。具体的には、どのような状況で症状が現れているのか、本人のどのような心理・身体的特徴が関与しているのか、ストレス耐性が弱まっているのはなぜか、その症状のためにどのような不都合が現れているのかなどを評価し、患者さんと治療者が協力して解決策を考えていきます。

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