輪読会資料③ 頭痛
2025.01.24
頭痛は胸痛・胃痛・腹痛・関節痛と同様,痛みの病症に分類される。中医学では痛みは「不通則痛」によっておこる,何か詰まるものの存在によって気血の流れを塞ぐため発生すると考える。具体的には,血行が悪くなって生した血,水分代謝の低下によって生じた湿,あるいは外感の風・寒・熱・湿などの邪気が気血の流れを塞ぐことによって痛みがおこるのである。痛みに対する治則は「痛随利減」で,停滞するものを通利させて痛みを止める。ただし通利法によって解決できるのは実の痛みであって,虚の痛みは補法と通利法を併用する。虚証の痛みであっても必す通利法を加えねばならない。頭は体の最上部にあり,頭部には臓腑の清陽の気,手足の三陽経の気など一身の陽気が督脈を通して集まってくる。このため頭は「清陽の府」または「諸陽の会」といわれる。このことから頭痛は陽に属する病変が多く,陰に属する病変は少ない。病に対する治療は,常に陰陽の調整を基本とするが,頭痛の原因はおおむね陽気不足あるいは邪気の上昇過多にある。このため治療は,陽の調整をはかって邪気を除くようにする。見方を変えれば頭痛は,深部(陰)の病変ではなく表部(陽)の病変であるから,治療は比較的やさしいといえる。頭痛は内科・外科・精神科・眼科・耳鼻科・歯科の疾患やその他の慢性疾患に付随してみられるが,いすれの分野の頭痛にも,本篇の弁証論治を応用することができる。
病因病機
頭痛は大きく外感頭痛と内傷頭痛にわけられる。外感頭痛は発症したばかりの新しいもので治療は簡単である。これに対し内傷頭痛は慢性疾患にともなうものが多く, くわしく弁証して臓腑の機能,陰陽のバランスを調整しなければならない。
外感頭痛
外感病とは外部の邪気を受けることによって発生する病気である。外邪には風・寒・暑・湿・燥・火の6邪がある。ほとんどの外邪は風にともなわれて体内に侵入する。また,「風に傷られる者,先ずこれを上に受く」といわれるように,外界の風邪を受けた場合,頭痛をはじめ,くしゃみ,咽痛など上部の症状が現われる。外感頭痛は,風邪が他の外邪を挾んで体内に入り込んでくることによっておこるが, 風邪と結びつく外邪の性質によって頭痛の症状は次のように異なる。
1.風寒頭痛 寒は凝縮して滞る性質があるので,気血のめぐりを渋滞させ詰まりが生し「不通則痛」で痛みがおこる。寒による痛みは強く,カゼをひいた場合も寒邪が多いほど頭痛は強くなる。痛みは頭だけではなく全身にも現われる。
2.風熱頭痛 熱は上昇する性質があるため,風熱の邪は,まず上部を犯し,熱感をともなった頭痛がおこる。頭痛とともに発熱,咽痛,ロ渇,咳,黄など外感風熱の症状が現れる。
3.風湿頭痛 湿は粘りやすい性質で,陰に属している。この陰邪が頭に集まっている清陽の気を包みこむと,頭が重く締めつけられたような痛みが感じられる。
内傷頭痛
臓腑の機能失調によって現われる頭痛である。頭痛に関連する主な臓腑は肝・脾・腎で,そのうち最も関連の深いものは肝である。
1.肝陽上亢 肝には「血を蔵する」機能があるが,肝の陰血が少ないと肝陽は陰の制約をはなれてどんどん上衝し,清陽の府(脳)を乱して頭痛がおこる。肝陽が上昇する原因は, 肝陰不足にあるので,治療は陰血を補ってやらねばならない。
2.肝火上炎 「肝は疏泄を主る」。肝は常に気が通じている状態を好む。しかし,疏泄機能が失調して気がめぐらす鬱結すると,肝気は熱を含み速い勢いで上昇し,目の充血,眩暈, 頭痛の症状が現れる。肝陰不足の場合とは異なり,激しい火の勢いを抑える治療法が必要となる。偏頭痛,自律神経失調による頭痛など,肝陽上亢と肝火上炎症による頭痛は特に多いので,肝を重点的に調整する方法を理解するとよい。
3.脾虚不運 睥は水穀を運化して,精微物質(栄養分)を気血に変え,これを頭部に昇らせる。上昇する気血が不足すると,頭は滋養を失い痛みがおこる。気血不足による頭痛は気虚頭痛と血虚頭痛に分けられる。多少違いがあるので注意が必要である。◇気虚頭痛:清陽の気が脳を充足できないための頭痛。疲労時に現われることが多い。◇血虚頭痛:血は精に変化しさらに髄に変わる。血虚のため「髄の海」である脳を養うことができない頭痛である。◇痰湿頭痛:脾の運化機能が低下して痰湿(実)が生し粘る性質をもつ濁が上昇して頭部に入り込むと実証の頭痛がおこる。痛みは頑固で長びきやすい。
4.腎虚 腎虚は一般的に腎精の不足をさすことが多いが,正確には腎陽虚,腎陰虚,腎精虚の3つに区分される。腎虚によって生じる頭痛にも違いがある。◇腎陽虚:腎陽が衰えると全体に寒が生しこれが原因となって頭痛がおこる。寒がる,手足が冷えるなどの症状をともなう。◇腎陰虚:陰と陽のバランスが崩れ陰少陽多になると,陽は陰の抑制を離れて浮上する。肝と腎は同源であるため,腎陰不足により肝陰も不足し,肝陽が上亢して,のばせや眩暈をともなう頭痛が現れる。◇腎精虚:腎精が不足するため髄の生成も少なくなり,髄海(脳)は空虚となり頭痛がおこる。眩暈,耳鳴り,健忘症,性障害の症状をともなう。
5.瘀血 外感病にせよ内傷病にせよ,病が長びくと瘀血が生まれる。また打撲などの外傷によて血が生しることもある。血瘀が脈管中の血流を塞ぐようになると「不通則痛」で頭痛がおこる。
漢方
- 分 類 症状 治療原則 方剤
外感頭痛
風寒 後背のこわばり,悪寒,クシャミ鼻水,舌苔白,脈浮緊
疏風散寒・止痛
川芍茶調散
風熱 頭部の脹痛・熱感,発熱,ロ渇,咽痛赤ら顔,目の充血,舌質やや紅,脈浮緊
去風清熱・止痛
桑菊飲、荊芥連翹湯、*菊花茶調散
風湿 頭重,頭部が包みこまれたような感じ身体がだるく重い,胸悶,食欲不振悪心,軟便,舌苔白膩,脈濡
去風勝湿・止痛
*羌活勝湿湯、霍香正気散
内傷頭痛
気虚 疲労時に頭痛がする,疲労倦怠感、息ぎれ,食欲不振,舌質淡白,舌質胖大
益気上清・止痛
補中益気湯
血虚 眩輦,顔面蒼白,動悸,不眠舌質淡白,脈細
滋陰補血・止痛
四物湯加味、婦宝当帰膠、人参養栄湯
腎虚 痛みの弱い頭痛,眩址,耳鳴、手足の冷え足腰がだるい,舌質淡白舌苔薄白,脈沈細
補腎瞋精養脳
八味地黄丸、海馬補腎丸、麻黄附子細辛湯
肝火 偏頭痛,熱感,赤ら顔,目の充血、口苦、口渇,難聴,便秘,舌質紅、舌苔黄,脈弦大数
清肝降火・止痛
竜胆瀉肝湯、釣藤散
痰濁 頭痛がながびく,眩暈,胸悶、悪心嘔吐,舌苔厚粘膩,脈濡滑
健脾化痰・止痛
半夏白朮天麻湯、竹茹温胆湯
瘀血 痛みが強い,固定痛,顔色暗黒、舌質癆斑、脈細渋
活血化瘀・止痛
*通竅活血湯、冠元顆粒、桂枝茯苓丸、加味逍遥散
鍼灸
頭痛は自覚症状の1つである。頭痛は単独で出現する場合もあるが,多くの急性疾患や慢性疾患のなかでも出現する。本篇では頭痛を主訴とするものについて述べることとする。頭痛を引き起こす原因にはいろいろあるが,分類すると外感性のものと内傷性のものに分類することができる。頭は「諸陽の会」とか,「清陽の府」とかいわれており,髄海が所在する部位でもある。五臓の精華である血や六腑の清陽の気は,ともに頭に上る。外感諸邪が留まって清陽を抑止したり,内傷諸疾により気血が逆乱して痕血阻絡となったり,脳の栄養が悪くなったりすると,直接または間接的に頭部に影響し頭痛が起こることになる。鍼灸の臨床でよく見られるものは内傷性の頭痛である。各方面でいろいろ治療を受けよくならなかったために鍼灸治療を受診するものが多い。このため本篇で紹介する症例は,内傷性頭痛が多くなっている。一般の頭痛と副鼻腔炎,鼻咽頭癌,中耳炎,乳突炎,齲歯,緑内障,脳腫瘍,頭部外傷などによって起こる頭痛とは鑑別する必要がある。弁証のサイドから分類すると,風寒,風熱,風湿,肝陽,腎虚,気虚,血虚,気血虧虚, 痰濁,瘀血,胃火頭痛などの証型がある。また疼痛部位のサイドから分類すると,太陽頭痛, 陽明頭痛,少陽頭痛,厥陰頭痛といったものがある。
弁証施治
頭痛の弁証を行うためには,現病歴を詳しく尋ねたり,病因を探す以外に,頭痛の経過, 痛みの性質や痛みの起こる時間,痛みの特徴,部位ならびに随伴症状といった内容を関連させて行う必要がある。つまりこういった内容にもとづいて虚実,寒熱,気血の違いを弁別し, 証型を分別して施治を行うのである。頭痛だから頭に鍼を刺すという方法は,全面的な治療とはいえない。外感頭痛は,一般的には急に発病し,痛みが激しいという特徴がある。痛みの性質は掣痛〔せいつう:ひきつった痛み〕,跳痛〔ずきずきする痛み〕,灼痛,脹痛,重痛,持続的に痛むといったものが多く,これらは実証のものが多い。治法は去邪を主とすればよい。一方,内傷頭痛は一般的には発病が緩慢である。内傷頭痛の痛みの性質は隠痛〔持続性の鈍痛〕,空痛〔空虚感を伴う痛み〕,昏痛〔ぼんやりした痛み〕といったものが多い。痛みも長期にわたるものが多く,疲れると痛みが起こるという特徴がある。痛みの発作は断続的なものとなる。内傷頭痛は虚証であるものが多く,治法は補虚を主とすればよい。虚証の頭痛では,本虚標実であるものが多く見られるが,標実に対しては注意しながら局所取穴により,佐として通絡止痛をはかるとよい。また虚証の頭痛には,局所穴への補法は慎んだほうがよい。標実に対して局所穴へ補法を施すのはなおさら慎むべきである。ところで頭は諸陽の会といわれている。手足の三陽経脈が頭に循行しているためである。また厥陰経脈も上って頭頂部に会している。一般的に太陽頭痛は後頭部から項部にかけて痛み,陽明頭痛は前額部と眼窩部に起こる。また少陽頭痛は側頭部から耳にかけて痛み,厥陰頭痛は頭頂部に起こる。厥陰頭痛は目系におよぶ場合もある。臨床上は疼痛部位にもとづき, 経絡の分布を参考にしながら循経取穴と局所取穴をうまく応用するとよい。
風寒頭痛
[主証] 頭痛,痛みは項背部におよぶ。悪風,さむがりといった症状がある。これらの症状は風寒を感受すると増強したり誘発しやすい。頭を圧迫したがる。ロ渇はない。舌苔は薄白,脈は浮または浮緊となる。
[治則] 疏風散寒,通絡止痛
[取穴」列缺,風池(瀉) ,阿是穴(瀉,加灸)。 風池,百会,阿是穴(灸瀉)。上処方により頭部の風寒を散じ温経止痛をはかるとよい。
[応用] 寒邪が厥陰経を侵犯して頭頂部痛が起こり,涎を吐いたり,四肢厥冷を伴い,舌苔が白で脈が弦である場合は,大敦,百会(灸)により厥陰の寒邪を温散させるとよい。
風熱頭痛
[主証] 頭部に脹痛,または裂痛〔われるような痛み〕が起こる。発熱,悪風,ロ渇,咽頭部痛,便秘,尿黄,顔面紅潮,目の充血といった症状を伴う。舌質は紅,舌苔は薄黄,脈は浮数となる。
[治則] 疏風清熱,利竅止痛
[取穴] 曲池,風池(瀉) ,阿是穴(瀉または点刺出血)。合谷,外関,風池(瀉) ,または阿是穴(瀉)を加える。
[応用] 便秘,口や鼻の瘡があり腑気不通であるものには,足三里,天枢に鍼で瀉法を施し,通腑泄熱をはかるとよい。
風湿頭痛
[主証] しめつけられるような頭痛が起こる。肢体のだるさ,胸悶,食欲不振,尿不利を伴う。大便は泥状の場合もある。舌苔は白膩,脈は濡となる。頭痛,頭重は気候の変化と関係する場合がある。
[治則〕] 去風勝湿,利竅止痛
[取穴] 風池,陰陵泉(瀉) ,あるいは阿是穴(瀉)を加える。
[応用」
◇湿が強くて食欲不振,胸悶がある場合は足三里(瀉)を加えると,去風勝湿,和胃寛中の効を収めることができる。
◇悪心,嘔吐がある場合は豊隆または上睆(瀉)を加えて降逆止嘔をはかるとよい。
◇頭痛,身熱して汗が出る,ロ渇,胸悶といった症状が夏季に起こり,それが暑湿による場合は,陰陵泉(瀉) .曲沢(点刺出血)により清暑化湿をはかるとよい。
肝陽頭痛
[主証] 頭痛,頭暈が起こる。あるいは頭のひきつる痛み,痛みは頭の一側が強いか,または両側ともに強い。心煩,怒りっぽい,不眠,顔面紅潮,目の充血,口苦といった症状を伴う。舌質は紅,舌苔は薄黄,脈は弦で有力となる。症状は精神的な緊張により誘発することが多い。
[治則] 平肝潜陽,通絡止痛
[取穴] 太衝,風池,百会(瀉) この処方は平肝熄風に重点をおいている。肝陽上亢,肝風内動による頭痛,眩暈の治療に用いることができる。
[応用]
◇腎水不足のために水不涵木.肝陽上亢となり,肝陽が清空に上擾(じよう)して起こる肝陽頭痛には,行間,風池(瀉) ,復溜(補)により平肝熄風,育陰潜陽をはかるとよい。これは鎮肝熄風湯の効に類似している。
◇肝気鬱結であったものが化火して肝火となり,肝火が清空に上擾して頭痛が起こる場合がある。この場合には頭痛は激しい頭痛となり,顔面紅潮,目の充血,脇痛,口苦といった症状が見られる。耳鳴りを伴う場合もある。また尿は黄,舌質は紅,舌苔は黄,脈は弦数となる。行間,丘墟,阿是穴(瀉)により清肝瀉火, 通絡止痛をはかるとよい。あるいは竜胆瀉肝湯の効に類似している太衝,丘墟, 陰陵泉(瀉)を用いてもよい。
◇偏頭風は片頭痛ともいわれている。肝経風火が上擾して起こるものが多い。この場合は足少陽胆経が循行している部位に片頭痛が起こる。激しい頭痛が突発的に起こり,同側の目や歯に痛みがおよぶ場合もある。風池(瀉) ,太陽(瀉または点刺出血) .太衝(瀉) ,あるいは阿是穴(瀉)を加えて平肝熄風,通絡止痛をはかるとよい。
腎虚頭痛
[主証] 頭部に空痛が起こる。眩暈,腰膝軟〔だるくて力が入らない〕,精神疲労,無力感,遺精,帯下,耳鳴り,不眠といった症状を伴う。舌質は紅,少苔,脈は細無力となる。
[治則] 養陰補腎益脳
[取穴] 復溜,腎兪(補)
[応用] 腎陽不足の場合には頭痛の他にさむがり,四肢不温,顔色晄白が見られ,舌質は淡,脈は沈細となる。この場合は関元,太谿,腎兪(補)により温補腎陽,補益精血をはかるとよい。この処方は右帰飲の効に類似している。
気虚頭痛
[主証] 頭部に空痛が起こる。痛みは鈍痛であり早朝がひどい。あるいは疲労時に増強する。精神不振,倦怠,息切れ,四肢無力,食欲不振といった症状を伴う。舌苔は薄白, 脈は虚または細で無力となる。
[治則] 補中益気,あるいは佐として通絡止痛をはかる。
[取穴] 合谷,足三里(補) ,あるいは百会(補)を加える。合谷,足三里で補中益気をはかり,百会を加えて清気が頭に上昇するのを助ける。この処方は補中益気湯の効に類似している。
[応用]
◇瘀血阻絡を伴い,痛みの部位が固定しているものには,合谷,足三里(補)に阿是穴(瀉)を加えて通絡止痛をはかるとよい。
◇虚中挟実のものには,合谷,足三里(補) ,百会(瀉)を用いる。これは補中寓散〔補をベースにして少し散じること〕の意を取ったものである。
◇気虚に腎虚を伴っているものには,合谷,太谿(補)により益気補腎をはかる。
血虚頭痛
[主証] 長々と続く頭痛が起こる。頭暈,目眩,倦怠。顔色蒼白といった症状を伴う。舌と唇の色は淡,脈細弱または虚濱となる。
[治則] 補血養血,佐として通絡止痛をはかる。
[取穴] 三陰交,膈兪(補)
[応用] 寒邪阻絡に対しては阿是穴(灸瀉)を加えて通絡止痛をはかるとよい。
気血虧虚頭痛
[主証] 頭痛,頭暈が起こる。頭痛は長々と続き疲労時に増強する。精神疲労,無力感,食欲不振,心悸,征・冲といった症状を伴う。顔色不華,舌質は淡,舌苔は白,脈は細弱無力となる。
[治則] 補養気血,あるいは佐として通絡止痛をはかる。
[取穴] 合谷,三陰交(補)
[応用]
◇頭痛が強いものには,阿是穴(瀉)を加えて通絡止痛をはかる。心悸,不眠のあるものには,神門(補)を加えて養心安神をはかる。この処方は人参養栄湯の効に類似している。また気虚が顕著であるものには足三里(補)を加えて益気補中をはかる。寒邪阻絡を伴い,寒を感受すると誘発したり増強するものには,阿是穴(瀉,灸を配す)を加えて温経散寒をはかるとよい。
◇心脾不足の場合,心虚のために血液の循環が悪くなり,脾虚のために生化の源が不足する。そのために気血が頭部にいたらないと頭痛が起こる。この場合は神門, 三陰交(補)により補益心脾をはかるとよい。
痰濁頭痛
[主証] 頭痛,昏懽が起こる。胸月完満悶,痰涎を嘔する,食欲不振といった症状を伴う。舌苔は白膩,脈は滑または弦滑となる。
[治則] 化痰降逆,通絡止痛
[取穴] 豊隆,陰陵泉(瀉)上処方には去湿化痰降逆の効がある。これはニ陳湯の効に類似している。阿是穴 (瀉)を加えると通絡止痛をはかることができる。また上処方に脾兪(補)を加えると健脾去湿,化痰降濁の効があり,さらに佐として通絡止痛をはかることができる。
[応用]
◇風痰による場合は,百会,豊隆(瀉) ,陰陵泉(補)により健脾化痰,熄風止痛をはかるとよい。これは半夏白朮天麻湯の効に類似している。
◇ロ苦があり,舌苔黄濁,大便不暢(ちょう)などが出現している場合,これは痰湿久鬱化熱の象である。豊隆.内庭,阿是穴(瀉)により清熱化痰,通絡止痛をはかるとよい。
◇雷頭風といわれるものがある。これは湿熱酒毒に痰がからんで上衝して起こる場合が多い。頭痛,頭中に雷鳴のような音がし,頭顔面部に赤いできものや腫れ物ができるといった症状が出現する。治療は豊隆,陰陵泉,合谷(瀉).阿是穴(点刺出血)により除湿化痰,清熱解毒をはかるとよい。
瘀血頭痛
[主証] 長期にわたる頭痛が起こる。疼痛部位は一定している。錐で刺すように痛む場合もある。舌質は紫暗,脈は沈濇(ショク)または細濇(ショク)となる。
[治則] 活血去療,通絡止痛
[取穴] 三陰交,阿是穴(瀉)
[応用]
◇寒邪を伴うか,あるいは寒を感受す 誘発するものには,阿是穴(灸を配す) を加えて温経散寒,活血通絡をはかるとよい。
◇痕血阻絡による頭痛で軽症のものは,局部の経穴を瀉して通絡去痕止痛をはかるだけで効を収めることが多い。
胃火頭痛
[主証] 前額部痛のものが多く,あるいは前額部熱痛となる。咽頭の乾き, ロ臭,煩渇して飲む,便秘といった症状を伴う。舌質は紅,舌苔は黄または薄黄,脈は数または洪数となる。
[治則] 清降胃火,通絡止痛
[取穴] 解谿,足三里(瀉) この2穴で清胃泄熱をはかる。あるいは頭維または陽白,阿是穴(瀉)を配穴して通絡止痛をはかる。
[応用] 気分に熱があって煩渇が強いものには合谷,内庭に鍼で瀉法を施す。便秘がひどい場合は中脘,天枢,足三里,阿是穴に鍼で瀉法を施す。