龍の薬膳part12 秋の養生 咳、痰
2023.09.11
秋の養生~肺を潤す食べ物:咳や痰に効く薬膳~
9月8日は二十四節気で「白露(はくろ)」です。
夜に大気が冷え、草花や木に朝露が宿り始める頃とされてます。
今年は赤道付近の気温が高く、日本付近ではまだまだ太平洋高気圧が覆って残暑が厳しくなると言われてますが、早朝、夜の風は確かに少し涼しくなってきているように思います。朝夕と日中の気温差で体調を崩しやすくなる季節ですので、気候・気温の変化によって心身の不調に至らないようしっかり養生して来る冬に備えていきましょう。
9月はまだ台風の訪れや残暑が厳しい一方、朝夕は涼しいといった湿度、気圧、気温の変化が大変はげしい時期です。
秋は乾燥した空気により肺を傷めやすいと言われてましたが、昨今の気候変動の中では、湿度や熱への対策も行っていかなければなりません。
湿度や気圧の変化は五臓の脾臓や肺を傷め、脾(胃腸)の弱い人、喘息持ちの人は特に体調を崩しやすくなります。
また、日中の熱さと朝・夕の涼しさといった気温の変動は五臓の心や腎を傷めます。
スポーツや行楽など、外で過ごすことが多くなる季節でもありますので、適度に水分やミネラルの補給を行い、熱い時は日陰や涼しい場所で過ごし、風が肌寒く感じたら一枚羽織って体温の急激な変動を予防する工夫も必要です。
気温差や湿度気圧変化の激しい秋の食養生の基本は肺やのど等、呼吸器を潤す食べ物を摂ることです。咳や痰と言った呼吸器系の症状がある方は特に養生してください。
乾いた咳は空咳といわれ、コンコン、カンカンといった感じで痰は殆ど出ません。
風邪や気管支炎、肺炎の初期に見られます。乾いたが長く続くときは肺結核の可能性もあります。
湿った咳はゴホンゴホン、ゼイゼイといい、痰を伴います。乾いた咳の症状が進んで湿った咳に変わることもよくあります。肺の病気、気管支拡張症、心臓弁膜症の場合にも見られます。
咳がはげしい時や発作的に起こった時、痰に血が混じったり緑や褐色の痰がでる時はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。また胸の痛み、頭痛、腹痛、発熱などの症状にも注意します。家庭では体力を消耗しないように栄養のある食事を心がけましょう。
今回は、ご自宅でできる肺やのどを潤す食材や薬膳調理を紹介していきます。
- ねぎ~咳止め・痰切りの妙薬
白髪ねぎは年中店頭にありますが、これから寒くなるに従い、旬となって安く求めることができるようになります。ネギの青い葉には栄養部分が多く、白い部分は薬効があり、風邪や咳、痰切りなどに効果を発揮します。ねぎの白い部分だけを使う「ねぎのハチミツ煮」をスプーン1杯ずつ1日に2回食べると咳を鎮め、痰を切る効果があります。
【ねぎのハチミツ煮】ねぎは白い部分だけを使います。ねぎ7本分の白い部分を適当な大きさに切り、すり鉢やフードプロセッサーなどですり潰し、鍋に移してハチミツおおさじと水100mlを加えて混ぜ、弱火でとろみが出るまで煮ます。
この煮たエキス一回にスプーン1杯、1日に2回食べると良いです。
煮るとねぎの甘味が増し、ねぎ特有の臭みや辛みもなくなり、お子様でも食べられます。
- しそ~発熱、寒気のある咳に
しその葉、実には咳止め、鎮静、鎮痛などの薬効があります。風邪を引いて発熱と寒気を伴う咳にはしそとショウガの煎じが効きます。
【しそとしょうがの煎じ汁】しその葉10枚にショウガ5gを加え、300mⅬの水で半量になるまで煎じて飲みます。またはしその葉10枚に陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの)としょうがを3gずつ加え、600mⅬの水で煎じます。これを3回にわけて温めて飲みます。
- 梨~喉、肺を潤す
熱があって、咳が止まらず、痰も切れない時や喉に痛みや渇きがある時には梨のしぼり汁が良く効きます。
【梨のしぼり汁】梨をすりおろし、ガーゼで絞った汁を飲みます。これにショウガの絞り汁とハチミツを加えて温めるホットジュースも咳と痰に効きます。
胃が冷えやすく下痢気味の人、冷え症の人、出産後には食べ過ぎないように注意しましょう。
- レンコン~風邪のひどい咳に効く
咳止めにはレンコン湯が効果的です。
【レンコン湯】レンコンを皮付きのまま薄切りにし、乾燥させます。この乾燥させたレンコンの薄切りを水で煎じます。これにだいこん飴(だいこんを5㎜の薄切りにしたものをハチミツで漬けた上澄みのもの)を加えて好みの甘さに調節します。1日3回飲むとひどい咳も治まります。
また、レンコンを生のまますりおろしてその絞り汁を飲むのも効果的です。この場合はきれいに泥を洗い流して皮をむかずにすりおろします。皮付きのままの方が薬効があります。
- ダイコン~昔ながらの咳止め薬
ダイコンは消化を促進する以外に肺の熱を取る働きがある為、風邪によるせきや痰を鎮めるのに最適です。
- きんかん~風邪の咳、痰に効く
よく熟したきんかん10個を丸ごと刻み、400mⅬの水と砂糖少々で沸騰するまで煮ます。この煮汁を温かいうちに飲みます。何回かに分け、温めなおして飲んでも良いでしょう。
また、熟したきんかん4個とナンテンの実10個をよく砕いて200mⅬの水で煎じ、砂糖小さじ1を加えたものにも同じような効果があります。
【咳や痰のタイプで有効な食べ物が違う】
~乾いた空咳が出て、痰は少ないけど粘りがあって切れにくい場合~
梨、ダイコン、ハチミツ、白きくらげ、ゆり根、枇杷の葉が良く効きます。
枇杷の葉は葉の裏の毛をたわしで落としながら洗い、陰干しにしたものを手で揉んで細かくしておきます。これに熱湯を注いでお茶にして飲みます。
~湿性の咳、痰の場合~
みかんの皮を乾燥させた陳皮、ゆずが適してます。
~身体に熱があり、痰が黄緑がかってたり、熱を帯びている熱性の場合~
ダイコン、冬瓜、梨、海藻類、枇杷の葉、柿などの体を冷やす作用の食べ物を摂ります。
ダイコンは煮るよりもサラダやすりおろしたものを生で食べます。
~身体が冷えて寒気がしたり痰が透明で冷たい感じの寒性の場合~
にんにく、ショウガ、ねぎ、陳皮、ぎんなん、クルミなどです。
ショウガはすりおろした物少々に熱湯を注いで飲むと身体が温まります。
ぎんなんは咳止めの他、喘息にも効きます。生の物は食べ過ぎると眩暈やひきつけなどの中毒を起こすことがあります。必ず火を通したものを1日に大人なら10個、子どもは5個を限度にしましょう。
【咳、痰の出やすい人は食事内容にも注意しましょう】
豚肉は食べ過ぎると痰が出やすくなります。痰の絡みやすい人や熱がある時には食べない方が良いです。
喘息の人や咳が出やすい人はブリの刺身を食べすぎると発熱、痰、嘔吐などの症状が出ることがあります。ブリを頂くときは素焼きか塩焼き、煮物等火を通したものを少量食べるようにしましょう。
他にも、もち米やタケノコも喘息や咳を悪化させるので、注意して摂るようにしましょう。 ~上記の記事は「食べて治す医学大辞典」を参考に作成しています。